【対談記事】内田 雅章 × 川原 猛
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成長企業発掘人・内田雅章氏と、弊社代表・川原猛の対談記事です。 (書籍 『すごい!ビジネスモデル2』 掲載)
不祥事により売上半減の経営危機に陥る
内田:一度信頼関係が築けると、ほかにも波及していく好循環になったわけですね。
それが今でも続いているんですか?
川原:いえ、実はそんな事業拡大のなかで大きな不祥事が起きてしまいました。
創業5年目で社員7~8人、配布スタッフが50~60人体制、営業所が3ヵ所になった頃のことです。
ある宅配寿司チェーンから受託した大量のチラシが、複数箇所にまとめて捨てられているのが発見されたんです。
捨てたのは当社のスタッフでした。
チラシを配布すると見せかけ、投函せずにチラシを捨ててさぼっていたのです。
この事件は広く知れ渡り、せっかく築き上げたお客様との信頼関係が大きく損なわれてしまいました。
さらに追い打ちをかけるように、リーマンショックの影響で主要取引先だった一部上場の不動産デベロッパーが倒産し、売掛金の回収ができなくなり、受注もすべてストップしてしまう事態となりました。
売上は当時月間2000万円ほどだったのですが、それが一度に半減したのです。
内田:経営危機ですね。
どんな業界でも現場の不正行為を予防するのは難しいですが、ポスティングのように常に外で活動するスタッフを監視するのは大変でしょう。危機を救ったのは取引先からいただいた言葉
川原:次から次に仕事が舞い込んできて、売上もどんどん上がっていく一方で、現場管理が行き届かなくなっていました。
捨てられたチラシの委託元は当時最大のお客様だった有名宅配寿司チェーンでした。
私は取引停止になるのは当然、損害賠償も請求されるものと思っていました。
ところが意外にも、その会社の部長さんは「取引を停止するのは簡単だが、それではトカゲのしっぽ切り。委託先を変えたとしても、この先同じことの繰り返しになる。
ポスティング業界が変わらなくてはいけない。
あなたの会社から変えていきませんか」とおっしゃってくれたのです。
しかも取引高は減ったものの、取引関係は継続してくださったのです。
内田:それは驚きですね!
業界の未来にも配慮した素晴らしい言葉です。
川原:このときは部長さんが仏様に見え、言葉が身に沁みました。
チラシを捨てる事件はほかにもありましたし、同一ポストに故意に複数枚のチラシを配布したり、マンションなどの管理人さんに断られているにもかかわらず夜間にこっそり再配布したりする行為が業界では散見されました。
それがこの事業の社会的評価を下げる要因になっていたと思います。
それを改善しなければならないと部長さんはお考えだったのだと思います。
私はこの事件を機に、初めて会社を経営することの意義を真剣に自分に問いました。
それまで何のための会社なのかということさえ、深く考えたことがなかったんです。
この出来事が、当社が生まれ変わるきっかけとなったと思います。
この部長さんは一生の恩人です。